約 3,498,533 件
https://w.atwiki.jp/vpvpwiki/pages/356.html
映像関連ソフトウェア 注意)価格は変動する場合があります。 動画作成・加工 複数の動画ファイルを重ねたり、エフェクトなどで加工します。 具体的にはブラーをかけたり、背景をぼかしたりします。 カメラワークをつけた背景だけの動画や、同じカメラワークのモデルだけの動画を複数作成し、ツールにより合成を行います。また、その際に様々なエフェクトによる加工を行い、インパクトのある動画に仕立てます。 NiVE (NicoVisualEffects) wiki内のNiVEページ 動画や静止画にエフェクト(効果)をかけることで、画像の加工・合成をすることが出来るツール。ニコニコ動画の名前である、「Nico」を含んでいるが、ニコニコ動画専用というわけではない。(開発者のmes氏がニコニコ動画ユーザーだった事に由来) 有志により、多数のプラグイン開発も進んでおり、現在ではかなり高機能化が進んでいる。 名称 NiVE2(NicoVisualEffects2) ジャンル モーショングラフィックスソフト 有料/無料 無料(フリー) 制作者 mes氏 配布サイト Download NiVE wiki その他 Wikipedia 記事ニコニコ大百科 記事【注意】各種プラグインの制作者は NiVE制作者 と異なります After Effects (AE) wiki内のAEページ Adobe Systemsが販売している、映像合成・モーショングラフィックス加工ソフト。商用ソフトであり、数多くのプラグインを標準で搭載しており、映像に様々な加工を行う事が可能である。 名称 Adobe After Effects ジャンル ビジュアル・エフェクツ統合ソフトウェア 有料/無料 有料 (製品版) 131,250円(税込)/ (アップグレード) 20,475円(税込)無料体験版について 30日間無償体験版ダウンロード可能 発売元 Adobe Systems Incorporated (アドビ システムズ社) 公式サイト ADOBE AFTER EFFECTS その他 Wikipedia 記事ニコニコ大百科 記事 動画編集 複数の動画ファイルをつなげたり、一部分だけ切り離したり、音声や音楽データを埋め込みます。 歌詞やせりふなどの文字入れもこの段階で行います。 AviUtl wiki内のAviUtlページ KENくん氏が開発・公開している動画編集ソフトウェア。AVIファイルを様々なフィルタにより加工、編集することが出来る。拡張プラグインにより、機能を追加することが可能。現在はマルチタイムラインによる本格的な動画編集や、MP4やFLVでのファイル出力も可能になった。字幕の追加などにも使われる。 名称 AviUtl ジャンル 動画編集ソフトウェア 有料/無料 無料(フリー) 制作者 KENくん氏 公式サイト AviUtlのお部屋(配布) その他 説明サイト (非公式) 初心者の為のAviUtl講座Wikipedia 記事ニコニコ大百科 記事 Windows Movie Maker (WMM) Microsoft Windows Me以降、標準添付されている動画編集用ツール。映像のトリミングが比較的容易に出来、テロップの追加などは簡単に出来る。タイトル編集などもしやすいため、初心者にも扱いやすい。 Windows Movie Makerジャンル 動画編集ソフトウェア 有料/無料 無料 (Windows Me, Windows XP, Windows Vista 標準添付) 開発元 マイクロソフト Wikipedia 記事 (Windows ムービーメーカー) ニコニコ大百科 記事 (Windows ムービーメーカー) Premiere Elements (PE) Adobe Systemsが販売している、映像編集ソフト。商用ソフトであり機能を豊富に取り揃えてある。オーディオ編集なども可能。ElementsはPremiereの廉価版シリーズ。 Adobe Premiere Elementsジャンル: 映像編集ソフトウェア 有料/無料: 有料 (製品版) 14,490 円 (税込) / (アップグレード) 10,290 円 (税込)無料体験版について 30日間無償体験版ダウンロード可能 発売元: Adobe Systems Incorporated (アドビ システムズ社) 公式サイト http //www.adobe.com/jp/products/aftereffects/ (ADOBE AFTER EFFECTS CS4) Wikipedia 記事 ニコニコ大百科 記事 Video Studio コーレル社が販売している、動画編集ソフトウェア。数多くのフォーマットの読み込みだけでなく保存にも対応している。使いやすさで人気がある。 Video Studioジャンル 動画編集ソフトウェア 有料/無料 有料 (ダウンロード通常版) 12,000円(税込) / (BOX通常版) 20,790円(税込)無料体験版について 無料体験版ダウンロード可能 制作/販売元 コーレル株式会社 製品概要 http //www.corel.com/servlet/Satellite/jp/jp/Product/1175714228541#versionTabview=tab0&tabview=tab0 Wikipedia 記事 ニコニコ大百科 記事 VirtualDubMod AVIファイルフォーマットに対応した動画編集ソフト。プラグインにより様々なフォーマットの読み込みが可能。GPLで配布されている。 VirtualDubModジャンル 動画編集ソフトウェア 有料/無料 無料 (GPL) 制作者 Avery Lee 説明サイト (日本語版公式) http //virtualdubmod.sourceforge.jp/ Wikipedia 記事 エンコード ニコニコ動画やzoomeなどは、それぞれ投稿可能なフォーマットやファイルサイズに制限がある為、エンコードと呼ばれる処理を行います。 つんでれんこジャンル: エンコードツール (スクリプト) 有料/無料: 無料(フリー) 制作者: 窓屋氏(開発終了[2010/5/13]→再開[2011/06/21]→最終版リリース[12/10/28])ver.3系 開発凍結中 Download つんでれんこのお部屋 ニコニコ大百科 つんでれんこ TDenc2 (Mac版つんでれんこ)有料/無料: 無料(フリー) 制作者: 窓屋氏 Download TDEnc2(つんでれんこMac版)公開 夏蓮根 (つんでれんこ改造版)ジャンル: エンコードツール (スクリプト) 有料/無料: 無料(フリー) 制作者: こ~りん氏 Download つんでれんこ まとめ wiki 図書館セットジャンル H.264エンコードツール 有料/無料: 無料(フリー) 制作者: 図書館P (Library) 氏 with #ニコニコアイマスPの集い有志氏 Download ニコマスPの知恵袋Wiki / H.264エンコード ニコエンコジャンル ニコニコ動画用・動画エンコードツール 有料/無料: 無料(フリー) 制作者: tokaiknight 氏 / farbeyonta 氏 ※ 共同開発ではなく個別開発 ニコニコ大百科 ニコエンコ 【注意】上記制作者欄の通り、ツールの内容が異なります どちらのバージョンも更新停止しており、初期設定等がニコニコ動画の現状に合っていない。また、再生環境によっては正常に再生できない動画が出来ることがあるなどの問題があるため、現状では非推奨
https://w.atwiki.jp/bokuori_data/pages/606.html
製作者 リバース 出場大会 第十回大会 経歴 設定 性別 男 年齢 15 ○実験体02の生い立ちから収容までの経緯 実験体02は17年前、世界最硬度を誇るスーパーコンクリートXに目をつけた、とある軍の科学チームによる遺伝子組換えにより生み出された生物兵器。 科学チームのリーダーにより実験体02は育てられ、様々な戦場や戦闘のシチュエーションを想定した訓練を受けた。 実験体02は音楽好きの(特にクラシック)人懐っこい少年に成長、科学チーム科学者達はゼロツーやディッグなどの愛称で慕い、ディッグ ア グラウンドと人間名をもらう。(以下ディッグ) しかし訓練や実験で成功するたびに褒められることに喜びを覚えたディッグは、敵を残滅すること、爆破することに生きがいを感じるようになり、許可なく破壊活動を行い、チーム内で科学者達に危険視されるようになる。しかしチームリーダーの言うことには絶対に従ったため、ディッグの研究・訓練は続行された。 しかし5年前、チームリーダーが不在中に行われた実験体01との戦闘テストで、ディッグは降参した無抵抗の実験体01にトドメを刺し、故意に殺害。それをきっかけに、負い目を感じた科学チームのリーダーは、ディッグに関する研究資料をすべて消去、及びディッグの特殊収容所への拘束を決めた。 ○実験体02の戦争への思いと目的、行動理念 特殊収容所へ収容される時、チームリーダーは実践のためだ、辛いかもしれないがこれは一人前になるための試練だとディッグに言い聞かせた。それを信じたディッグは、収容所内の囚人の足音を聞き分けることに時間を費やし、実践のその時を待ち続けた。 そして特殊収容所内のすべてのロックが解除され、ディッグはついに実践が始まったと思い独房の外へ。 ディッグはこの戦争を、いかに敵を倒し破壊し、脱獄囚グループを勝利に導くことができるのか、という実践であると認識している。 ディッグはこの実践を達成することで、科学チームのメンバーやリーダーに褒めてもらいたい。という一心でこの戦争に参加している。 ○実験体02の特徴、攻撃方法と思考 もぐらをモチーフとして作られている。大きな両腕からスーパーコンクリートXを鋭利なシャベル状の爪として生やし、両手のひらにはこちらもコンクリXの鋭い歯のついた口がある。 このシャベル状の爪でどんなに硬い地面も掘り進むことができ、そのスピードは時速90㎞である。 さらに掘り進みながら手のひらの鋭い歯で土や石を噛み砕いて飲み込み、土中の栄養分や虫を摂取して栄養を補給、残りの鉄分等を体内で地雷や魚雷、爆弾などに変えることができる。 (作り変えたモノは口から出る) もぐらのように聴力と嗅覚に優れており、爆発の中でも敵の足音を聞き分けたり嗅ぎ分けることができる。 しかし視力はほとんどなく、頭に付けているのは暗視ゴーグルとかん違いされがちだが実はサングラスである。 主にゲリラ戦と近接戦に特化しており、地面に潜みながら地雷や爆弾を仕掛ける、地面を沈下させ相手を地中へ落とし暗闇で仕留める、地上へ飛び出し奇襲を仕掛けるなどの戦法をとる。 技や使用武器 ○ネイルガード コンクリXの巨大なシャベル型の爪で敵の攻撃をガードする技。 自身の仕掛けた爆弾の影響を受けないように使用することもできる。 ○シャベルジャビング 巨大なシャベル型の爪で敵や地面を貫く強力な突きを繰り出す技。 この技を連続して繰り出し、地中を掘り進み、どんな障害も突き破る。 ○クリラウェポンズ 両腕の口から摂取した(主に土中の)鉄分を地雷や魚雷に作り変える能力。 ・地雷 一般的な踏むと爆発するタイプの地雷。 その威力は一発で戦車を破壊する程。 ・落盤地雷 威力はそこまで高くないが、踏むと周囲の地面を破壊し大穴を開ける落とし穴の効果がある地雷。 戦車や砲台を根元から破壊したり、暗闇で自分に優位に対戦するため、地中に相手を落とすのに使用する。 ・爆弾 設置後30秒又は衝撃が加わると爆発する設置型。 大型飛行船を一発で機能不全にする程の威力がある。 ・土竜魚雷 地上へと地面を掘り進みながら浮上し、爆発する特殊な魚雷。 地中から姿を見せずに地上の敵を攻撃することができ、一発で象の足を吹っ飛ばす程の威力がある。 ○アネーシャバイツ もぐらがミミズを仮死状態にする際使用する、睡眠効果のある唾液、そのさらに10倍の効果の唾液を含ませた牙で噛みつく技。 ただし噛みつくために相手とゼロ距離になる必要があるため、これは奥の手である。 補足
https://w.atwiki.jp/utataneleaks/pages/23.html
ここでは便利なソフトウェアを紹介していくページです。 ツール名 AltDrag コメント linuxではウインドウの移動をするときにALTキー+ドラッグアンドドロップをすることにより ウインドウ上部をドラッグアンドドロップせずとも移動ができる。 この便利な機能をwindowsでも実現しようとしたのがこのツール。 詳細はこちら↓ http //www.ghacks.net/2008/11/13/alt-drag-windows-moving-made-easier/ ダウンロードのリンクは↓ http //code.google.com/p/altdrag/downloads/list ツール名 Explzh コメント 圧倒的な使いやすさでおしっこもらしました ダウンロードのリンクは↓ http //www.ponsoftware.com/archiver/download.htm
https://w.atwiki.jp/anime_wiki/pages/6494.html
2004年10月放送開始。 http //trinet.cata.jp/princess_hour/ 監督 関田修 原作 プリンセスソフト シリーズ構成 長谷川勝己 キャラクター原案 如月水 キャラクターデザイン 新田靖成 総作画監督 新田靖成(~8話)、村井孝司(9話~) 美術監督 宮前光春 色彩設計 のぼりはるこ 撮影監督 所俊克 編集 岡田輝満 音響監督 飯塚康一 録音エンジニア 渋江博之 音響効果 中野勝博 音楽 酒井良 アニメーション制作 トライネットエンタテインメント、ピクチャーマジック 制作協力 陸演隊 シナリオ 長谷川勝己 絵コンテ 関田修 小波広 下田久人 所俊克 演出 関田修 所俊克 下田久人 鎌田祐輔 作画監督 新田靖成 乙幡忠志 波風立流 岡村正弘 森川均 ■関連タイトル W~ウィッシュ~ Vol.1 初回限定版 W~ウィッシュ~サウンドトラック W~ウィッシュ~ミラクルボーカルベスト W ウィッシュ 公式コンプリートファンブック 原作ゲーム PS2 W ~ウィッシュ~
https://w.atwiki.jp/cold_blood/pages/30.html
オルガによってホロコーストは解き放たれた。 その赤い光は、インバースの故郷を消滅させた時とは比べ物にならない威力で、 オルガが指定し、「グレンが望んだ場所」を消し飛ばした。 ホロコーストを発射できる回数は、あと1回。 動力炉に接続されたスカーレットの命が尽きる時、その最後の一撃は放たれる。 残された時間で、アリシアは、砂塵の鎖は、ホロコーストを破壊できるのか。 アリアンロッド コールドブラッド 最終話 「決戦、ホロコースト」 数々の人の願いを胸に、アリシア達の最後の戦いが今、始まる。 「ウフ……ウフフフ……アハハハハハ!!!」 ホロコーストの威力を目の当たりにしたオルガは高笑いをする。 「すごいわね、ホロコーストの威力は。古の魔族はこれを連発してたんでしょう?とんでもない魔力の持ち主だったのね。」 そして、オルガの眼前にはおびただしい数の死体が転がっていた。 「グレン様……もうすぐです。もうすぐ、この忌まわしい国を消し飛ばしてあげられますわ。ウフ……ウフフフフフ……」 「ご老人、貴方に話がある。」 テントの中にいた老人にそう話をしたのは、クリムゾンだった。 隣にはペッパーもいる。 「伝説の戦士、クリムゾン殿とペッパー殿がご用とは……私の首を跳ねる日でも決まりましたかな?」 「いいえ。」 ペッパーはその問いに首を横に振った。 「あなたにはなんとしても生きていてもらわなければならない……とは、カーマインの言葉だけど。」 「そして、やつはこうも言った。ホロコースト打破のためにはあなたの知識が絶対に必要になる、と。」 老人は自嘲する笑みを浮かべ、 「……買いかぶり過ぎですよ。私は、取り返しのつかないことをしてしまった。」 「カーマインはこう伝えるようにとも言いました。『ホロコーストが発射された。あなたの知識はあの悪魔を打破するためにどうしても必要になる。このまま静観を決めることも一つの手ではあるが、そうしてしまっては本当に取り返しがつかないことになる。今なら、まだ間に合う』と。」 『ホロコーストが発射された』 その言葉に老人は反応した。 「ホロコーストが?し、しかしあれには秘めている魔力が先天的か後天的かを選別する機能が備わっていて、冷血党が行っていた改造では発射させる事は出来ないはず。一体誰が……?」 「少なくとも私やカーマイン、そしてルージュではありませんね。」 老人の脳裏に一人の女性が浮かぶ。女王と同じ赤い髪を持った、義手義足の女性…… 「まさか……ま、まさか……」 ペッパーはもクリムゾンも、首を縦に振った。 「スカーレット……あの子が、動力炉にいます。」 老人は、悲痛な顔で頭を抱える。 「ついてきて、くれますね。」 老人は深呼吸をして、何かを決心したように二人に告げる。 「わかりました。ですが、ひとつだけ……ひとつだけ、わがままを通させて頂きたい。」 4人は宝物庫の中を物色していた。 これでは人聞きの悪い物言いだが、宝物庫を前にしたルージュから、 「これから、ホロコーストとの闘いが始まります。金銭や宝石、骨董品の類等が敗北した時に残っていても仕方ありません。 それよりも重要なのは戦いを終わらせるために最善を尽くすこと。そして、この場に収められている装備品を最も効率的に扱えるのは貴方達4人です。 持ち出したものの報告はしていただきますが、必要なものがあれば遠慮せず持って行って下さい。」 との言葉を賜っている。 これは現在北の街に帰るに帰れない4人にとって、最も合理的な装備品の強化手段なのである。 「参ったな、ビームとホイールが使える鎧は無さそうだ」 「すごいわね、宝石が全部『最高級サファイア』だわ。これはこれで綺麗だけど、私の魔法の媒介にはできないわね。」 「うーん……良さそうな槍はないなあ。」 繰り返すが女王公認なので合法である。 「この鎧……加工したら使えねえかな?」 タージュの眼前にはドゥアン以上の巨漢、ともすれば巨人が使うような大きな鎧が鎮座していた。 「タージュ、本気か?確かに防御力はありそうに見えるが……」 「これは、ゴーレムのパーツを加工したものかな?」 「それは、かつてこの地を訪れた怪力無双の戦士が使っていたとされる鎧だ。 なんでも、ゴーレムの装甲を加工して作られたものらしいが、それがどうかしたのか?」 宝物庫の整頓、特に力仕事のために働いていて偶然近くを通りがかったブラックハウンドの隊員による解説が入る。 「これを俺の鎧と組み合わせて……よし、いけるな。」 「それはそうだが、それにしたって随分と重たそうじゃないか。本当に大丈夫なのか?」 ウィリーは訝しんで聞いた。タージュが鍛えられた戦士である事に疑いは無いが、見るからにタージュの身長よりも遥かに大きな鎧だ。 着ただけで身動きがとれなくなるのではないだろうか?という懸念は最もだった。 「驚いたな、これを着ようとする者が現れるとは。」 「俺は、盾役だ。俺が倒れれば戦線の維持は厳しくなる。 ならば、少しでも長く持ちこたえられるようにするべきだろ? それに、オルガはまだ何か力を隠し持っている気がする。これ位の事はしておかなければな。」 だが、そのまま使うにはさしものタージュにも重すぎる。 そこで、この鎧の外装をパーツとして鎧に取り付ける事となった。 これと鎧の加工を依頼し、タージュ達は会議へと赴くことになる。 ホロコースト発射の報せから、2時間が経過した。 アポロたちはホロコーストの着弾点に出向き、現在会議に参加するのはカーマインとルージュ、そして砂塵の鎖だけである。 「まずは、被害を確認しよう。ホロコーストの着弾点……消し飛んだ場所は、ここだ。」 そう言って、カーマインは地図の一点を指し示した。 「マゼンタの遺跡に近い場所か。なんでこんな所を?」 「外したのかしら?」 口々にそう言う砂塵の鎖の面々。 「いいえ。恐らくは狙い通り……なのでしょう。グレン……」 ルージュはその場所に心当たりがあるようで、少し沈痛な面持ちを浮かべた。そしてカーマインは話を続ける。 「ここは……コバルトの墓があった場所だ。遺体が埋葬されていた。 ピンポイントでここだけが消し飛ばされたようだ。今、被害はアポロ達が確認しに行ってるが、現場一帯はインバースの故郷と同じような状態になってると考えるべきだろう。 空間自体が削り取られて人的被害がどの程度のものかは想像が出来ない。最も人があまり寄る場所でもないが……」 インバースはその話を聞き、抉り取られて消えてなくなった故郷の様子を思い出す。 夥しい血煙が舞うような場所になっていたならまた違った反応を示したであろうが、 故郷を失ったといっても、状況が異質過ぎた。 「困ったことに、ホロコースト発射の予兆は視認出来る距離でないと判別が出来ない。 私達がマリスと戦っていた時、奴は回数こそ撃ってきたが着弾点のコントロールはできていなかった。」 「なるほど。一発でも当たってればただでは済まなかったでしょうし、カーマインさん達が五体満足で居る事が何よりの証拠というわけね。」 「ああ。だが、グレンとオルガが指示を出したのか偶然かはわからないが、少なくともコバルトの墓を標的にした可能性はあると考えても良いだろう。」 「そうですね。偶然にしては出来すぎている。」 「でも、どうしてこんな場所を?私が冷血党なら迷わず今私達がいるここを撃っちゃうけど。」 「私がグレンの立場だったとして仮説を立てるのなら、コバルトへの復讐という意味なのだろう。 死者の遺体に対して攻撃を加えることは戦時下においても死者への冒涜であり、最大級のマナー違反とされている。 だがグレンからしてみれば、コバルトは妻を無理矢理拉致し、50年間軟禁した憎むべき相手…… その憎悪は我々からは計り知れないものなのかもしれないな。そして、これは仮説だが」 カーマインは一つの結論に至っていた。彼の考えうる最悪の事態……それは 「この仮説が当たっていた場合の最悪のパターンとして、奴らは『数を打てない』代わりに『着弾点をコントロールできるようにした』と考えられる。 もしこの仮説が当たっていたとしたら、こちらはある意味動きやすいが動きにくくもある。 ホロコーストを自爆させる危険性が無いわけではないし、我々の隙を突いて人が多い場所に撃たれでもしたら大変だ。」 「カーマインさん、ひとつ質問が。」 「何かな?ウィリー。」 「マリスが使っていたときに連射していたと仰っていましたが、どのくらいの頻度で発射していたのでしょうか? 万一のことを考えると我々も危険なのでは?」 「そうだな……奴にとってはホロコーストは『おもちゃ』だった。連発していたといっても少し間を空けていたが、それは『逃げ惑う人々を見て愉しむため』だ。本気になればひと呼吸ごとに連発してきてもおかしくはなかっただろう。 ただ、スカーレットとマリスの魔力の量は天地ほどの差がある以上、一概に私達を相手にどの程度の速度で連射していたかは基準として当てにならないだろうな。 そして、コントロール出来るとあれば国全体が危険地帯だ。どこへ逃げても変わらんよ。だからといって望みがないわけではない。」 「と言いますと?」 「マリスが使っていたのは完全な状態のホロコーストだ。そして、今考えうる可能性を総合するとローグは『不完全な状態で発射している』と思われる。」 「不完全?」 「ええ。封印が解かれて所在がわからない二つのパーツですが、あれを破壊するように命じた別働隊は今もなお行方不明です。」 そう返したのはルージュだった。 「別働隊が行方不明になった先で二つのパーツを破壊するために動くことと、オルガはあなたたちが戦って撤退させた事から考えて少なくとも私達が知っている限りではパーツを手に入れていないはず。 もちろん楽観は出来ませんがこれらから考えると、あの戦いの後取り付けて発射するような時間はなかったと考えられます。」 「カーマイン。連れてきたわよ。」 会議中に訪れたペッパーが連れてきたのはひとりの老人だった。 「後は頼むわね。私とクリムゾンはアポロ達の様子を見てくるわ。」 「ああ……ご老人、こちらへ。」 カーマインに促されて着席した老人。 「まずは、この場に来ていただいたことに感謝します。 あなたが知っている、ホロコーストについての情報を教えていただける……そう、判断してよろしいのですね?」 「……私の知るホロコーストについての情報を、この場で洗いざらい白状致しましょう。 その代わり砂塵の鎖の皆様。あなた方にお願いがあるのです。」 「お願い?」 「それは後でお話致します……申し遅れました。 私の名は『ニックマン』。グレン殿が国外追放されてから、冷血党を旗揚げするまでの45年間、娘を伴って行動を共にしていた男です。そして、娘の名は……『オルガ』」 「オルガのお父様?」 「ええ。私は商人としてグレン殿の錬金術によって開発された医薬品等を販売し、彼の行動資金を得る手伝いをしておりました。 娘もグレン殿にはよく懐いており、その延長であの子は子供の頃から錬金術の手ほどきを受けています。」 「なるほどな、どおりでショットガンなんて使ってきた訳だ。」 「……事の起こりは今から4年前。冷血党の結党式には出ずに私とオルガを含めた数名で西の地域に伝わる民話を調査していました。」 「民話?」 「女王陛下ならご存知やもしれませぬが、『火山近辺で地震が起こる時、赤い光が大地を抉る』という旨のものです。 もっとも、あの山は死火山。万が一の災害時にそこで人が生活できるよう地下都市を建設するための工事という面もありました。」 「そんな民話があったとは初耳だな。」 「カーマイン殿がご存知ないのも無理はありません。私どもの調査の結果、この話はあなた方レッドウルフの戦いのことだと判明しました。」 「……それは、面映い。」 「話を続けますが、今から2年半前の事です。山の最奥部にてホロコーストが発見されました。 当時はホロコーストという兵器だとはわからず、機械であることからグレン殿とオルガを中心としてこれが何だったのか調査をはじめ、これが『3つのパーツに分断された兵器の本体部分であり、これだけでも動かせる』事がわかりました。 起動実験に最初、グレン殿は難色を示しましたが一部のタカ派メンバーからの声が大きくなり、やむを得ず起動実験を行ったのです。」 「やむを得ず?」 「タカ派メンバーは国家転覆をも考えていましたがグレン殿の目的はあくまでも奥方……つまり、女王陛下を取り戻すこと。これを『兵器』ではなく、『コバルト王への抑止力』として使いたかったのですが……起動実験中、何かのはずみでホロコーストは発射されました。 民話に伝わる通り周辺では地震が観測されましたが、これはホロコースト自体が揺れたことによって起きた地響きだったのです。 ……インバース殿には、いくらお詫びしてもしきれない事をしでかした…… グレン殿はホロコーストの威力を目の当たりにしてから、それに取り憑かれてしまった。ホロコーストを再び発射できるようにする事に執心するようになり、私の娘もこれを補助するべくグレン殿から教わった錬金術の技術すべてを注ぎ込むようになった。 あの子は、グレン殿が絡めば何を諌めても聞くような子ではありません。」 「……まあ、そうだよな。」 砂塵の鎖の面々は何度か目にしたオルガの様子を思い返していた。 「……ホロコーストは今お話した通り、火山の最奥部に存在します。 移動させるには余りにも巨大過ぎる。 二つのパーツについては、話を伺う限りでは王城の最奥部に封印されていたものを、封印が解除された際に居合わせた者が破壊したと考えて良いはずです。 そうでなければ、確実にオルガの手に渡っている。調査の過程でホロコースト本体には砲身の冷却機能と、迎撃システムが」 「あると」 「いいえ、逆です。神官が使う防御障壁のようなものを展開する機能だけは備わっていましたが、兵器として運用する上で絶対に必要になる砲身の冷却を制御するパーツと、迎撃システムのパーツが存在しませんでした。 これは推測ですが、二つのパーツにこれらの機能が備わっていた可能性があります。」 「つまり、オルガがパーツを入手していた場合は?」 「迎撃システムによる周辺への攻撃機能を備えた上で連発してくる事が可能です。 砲身の冷却は自然に行うとなればかなりの時間を使うため、連発は出来ません。また、常人なら一発分で魔力を使い果たして死んでしまいます。そして、ホロコーストには魔力が先天的に備わっているものか後天的に与えられたものかを判別する能力もありました。 耳触りの悪い物言いで恐縮ですが、あれを人間が動かそうとするのであれば、この国で先天的に最も高い魔力を有するスカーレット様を動力炉に接続する事が最も効果的です。 しかし、優れた魔力を有しているとは言え、スカーレット様は人間であらせられる。 魔族でもない人の身で発射に耐えられるのはどれほどの者でも一発が限界のはず……」 ニックマンは言葉を詰まらせた。 何が起きるのかはこの場にいる誰もが想像できていて、そしてそれは誰が言わずとも同じことを想像していた。 そして、それは時間の猶予が無いという事を示唆している。 あと一発でも撃たれれば、スカーレットの命はない。 「……あの時、私はホロコーストを破壊するべきだった。そうすれば、こんな事は何も起きなかった……グレン殿も、娘も道を誤ることはなかった……」 「ニックマンさん。一つよろしいですか?」 そう切り出したのはウィリーだった。 「何か?」 「どこまでが、グレンさんの意思だったのでしょう?」 「……今となっては、わからない。」 「ホロコーストの起動実験により箍が外れてしまったのでしょうか? もし、スカーレット様を動力炉に組み込む事が彼の発想だっとしたら、僕は……」 「……すまない。本当にそれがグレン殿の意思なのかどうかまでは、私にも推し量れない。 話を続けますが、ホロコーストの発射後、着弾点となった街が地面ごと抉り取られて消し飛ばされたという話を聞いた私はホロコーストが再び発射される事を恐れました。 あれは再び起こして良い物ではない……永久に使えないようにするには私一人の力では到底及びませんが、それでも出来る事はしておこうと、動力炉の致命的な欠陥に気付かれないよう細工を施したのです。 あれに娘とグレン殿が気付いていなければ、まだ望みはあるはず。」 「致命的な欠陥?」 「ホロコーストは動力炉の構造が非常に単純なのです。まだ幼かった娘にグレン殿が錬金術を教授していた時、傍らで聞きかじっただけの知識しかないこの私にすらわかる程に。」 「機械の街カナンなんかではありふれた錬金術で作った自動的に動く玩具も、動力源を取れば動かなくなると聞いた事があるが、それと同じ事だと?」 「はい。ホロコーストは動力炉から動力源を排除すればあらゆる機能を即座に停止してしまいます。」 「なるほど、そんな機能が……マリスがどうやって魔力を供給していたのかは今となってはわからないが、何はともあれ動力を断てば二次被害を起こす事なく破壊できる、と。」 「その通りです。そして、一刻の猶予もありません。」 「わかった。ではこれより火山へ向かう部隊を編成しよう。 アリシア達にも勿論来てもらうことになるが、それだけでなく今回はブラックハウンド最強の精鋭を集めよう。そして、私も同行する。 私には、『レッドウルフ』の一員として事の顛末を見届ける義務がある。」 「ちょっと待って。」 そう差し止めたのはルージュだった。 「おじさま、そんな大部隊を編成しては冷血党に感づかれるのでは?」 「ああ、わかってる。そこでお前の出番だ。」 「私の?」 「解放軍とブラックハウンドの残りの人員を、治安維持に必要な者を除き全員出す。 お前が……女王自ら指揮を執って火山周辺に展開すれば冷血党は嫌でもそっちに目を向けざるを得なくなる。 最も、お前自身の命を危険に晒すことになるが……」 「……親が、娘を助ける為に、何故命を惜しみましょう。 今まで親らしい事を殆どしてあげられなかった。傷つき倒れたとしてもそれは私にとって本望です。 それに、私にもこの戦いを終わらせる義務がありますから。」 出立する寸前、ニックマンは砂塵の鎖の4人に話しかけた。 「砂塵の鎖の皆様……私は一度元いたテントへと戻ります。 どうしてもやっておかなければならないことがありますれば……」 「ところで、私達に頼みたいことって?」 ニックマンはその問いに表情を曇らせる。 「……娘は、人の道を外してしまった。本当であれば私自身の手で全てを精算しなければならなかったのです。 貴方達に頼まなければならない己の非力が呪わしい…… あの子は、グレン殿の願いを曲解している。そして、グレン殿が絡む事となると、小さい頃から人の言う事を聞く子ではなかった。ホロコーストの発射、という最悪の結果を招いた責任は私達親子にあります。 ですが、あの子の錬金術師としての才覚は親の贔屓目をなしにしても抜きん出ている。研究結果は人の体を作り変えるところまで来てしまった。」 「この老いぼれには最早手に負えるものではありません。貴方達にお願いしたいこととはほかでもない……あの子がこれ以上罪を重ねる事は、親として見るに堪えません。あの子にもしも出会ったらその時は躊躇わずに、殺してくだされ」 親として断腸の思いで願い出たのは、『娘を殺してくれ』と言うものだった。 「本当に、それで良いのね?」 「あの子に、罪を生きて償わせる事は不可能に近いでしょう。そしてあの子は思うがままに力を振るう能力があり、それに応える力を持っています。 もし更正させようとしても何百、何千という人々の血が流れる事でしょう。」 ニックマンの表情からは、親としての責任を果たすべく自らがオルガを殺せるようならとうに殺しているという悲壮的な覚悟さえ伺える。 「親がいない身としては、親が子を殺すよう依頼するなんて本当はあまり気分が良い物ではないけど……わかりました。それは解放軍の部隊としてではなく、『冒険者への依頼として』お受けします。」 「そうだな、僕もそれには同意するよ、アリシア、……ニックマンさん。あなたは言いましたね?『オルガが、グレンさんの望みを曲解している』と。 しかし、いくら曲解しているとは言えグレンさんが自分がやろうとしている事を分かっていないというのは有り得ないはずです。 もし、ホロコーストの発射をグレンさんが自分の意思で行ったと言うのであれば、ニックマンさん父娘だけでなくグレンさんにも責任があると考えます。」 「仰る通りです。そして私自身では最早どうする事も出来ないからこそ、皆さんの力にお縋りする他ないと判断致しました。その過程や結果としてグレン殿や娘をはじめ多くの人の血が流れるやもしれません。 ですが、それでもなおホロコーストは止めなければならないものだ。 カーマイン殿も女王陛下も、各々、最大の目的は違いますが御自身の命すら天秤にかけてはいないでしょう。私も、己の掘り起こしてしまったものが引き起こした結果を正面から受け止める覚悟が出来ているからこそ、この場に馳せ参じたのです。」 4人はその表情からニックマンも、この場に並々ならぬ覚悟を持ってこの場に来た事を再認識した。 「では、『紫の猫として』、ホロコーストとオルガに不幸を届けましょう。」 アリシアは不敵な笑みを浮かべていた。 「取り込み中にすまないが、ちょっといいか?」 そう話しかけてきたのは宝物庫で会話したブラックハウンドの隊員だった。 「タージュ、君の鎧の加工が完成したから装着してみてくれ。」 そして、出立の時。 城門の前でタージュを待っていた3人は地響きを感じ取った。 ホロコースト発射の前触れかと周辺を見回すと、そこにはゴーレムと見紛う巨大な鎧が歩いてきていた。 「うおっ!」 「え!?ゴーレム!?」 「すまない、待たせたな。」 「その声……タージュか!?」 「ああ」 「う、動くのか?それ……?しかし、最早『堅牢』という言葉では表現が足りないな。」 「盾役として言うのならば、これでも不足だと言いたいところだけどな。だが、今の俺の力であればこれが最良の形だ。」 「随分と頼もしい鎧になったわね、タージュ。……みんな、準備はいい?」 アリシアの問いかけに3人は頷く。それは、最後の戦いに向けた準備が終わった事を意味していた。 それを確認したアリシアは転送石を掲げた。 「来たな」 先行して到着していたカーマインとブラックハウンドの数十名の隊員が火山の入口に集まっていた。 山の周辺ではルージュとアポロ達、そして解放軍に残るほぼ全部の戦力を集結し陽動作戦が始まっている。 「準備は出来ているな?」 「ええ、行きましょう。」 アリシア達は火山の洞窟へと足を踏み入れた。 フィンが果たせなかったホロコーストとの因縁を打破するために、ホロコーストへと不幸を届けるために。 ニックマンから受け取った火山内部の地図は非常に正確なものだった。 そのおかげもあり、砂塵の鎖をはじめとする突入部隊はごく最低限の消耗だけで進んでいく。 「貴様、ここで何をしている!?」 そう叫んで臨戦態勢をとったのは怪人ですらない警備兵達で、今のアリシア達にとっては最早相手にもならない連中だった。 相手も自分たちの力量を心得ているようで、時間稼ぎの為に程々に戦って即座に逃走していった。 ホロコーストの破壊力を目の当たりにしたのだろうか? 再び坑道を歩いていくと、数刻して開けた場所へと到達した。 「随分開けた場所ね。」 「ニックマンさんが言ってた自然災害時の避難場所なのかも知れない。」 「確かに。だけどもここはどちらかというと資材置き場のようだな。」 そんなやり取りをしつつ地図を確認していると、後方から叫び声が聞こえてきた。 「敵襲ー!!!!」 巨大なゴーレムが何体か、ブラックハウンドと交戦状態になっていた。 「砂塵の鎖の諸君!隊長と共に先に行け!ここは私達が!」 「しかし、ブラックハウンドの戦力であのゴーレムを相手には……」 「忘れるな、最大の目的はホロコースト、そして、王女様の救出の要は君たちだ。 君たちが先に進まずして何とする!迷わず先へ進むんだ!」 「隊長!後は頼みます!」 鬨の声と共にブラックハウンドはゴーレムたちに向かっていった。 彼らにこの場を託してこのエリアを踏破したアリシアたちは、長い水路に直面していた。地図によればこのまままっすぐ進む他ない。 「……これはまた。」 「俺は竜に乗ってるからな、一人だけなら俺が運べる。場合によっては俺が往復するのが一番早いと思うが……?」 「ニャー」 突如聞こえる猫の鳴き声に、インバース、タージュ、ウィリー、カーマインの4人は声がした方向を振り向いた。 アリシアが、猫の姿に戻っていた。 「……なるほどな、猫の姿なら竜への負担も少ないってわけか。」 苦笑交じりにインバースはアリシアを竜に乗せる。 「じゃあ、俺たちは……」 「久しぶりだな、水泳は。しかしタージュ、その鎧を着けてて大丈夫なのか?」 ウィリー達はこの水路を泳いで渡る事に決めたようだ。 見るからに『沈没』しそうな鎧姿のタージュを見て、ウィリーは尋ねる。 「大丈夫だ。泳げなければ歩けばいい。見たところそこまで深い訳ではなさそうだが。」 「痛ぇっ!タージュ、インバース、気をつけろ、ここは酸の池だ!」 水路改め酸の池に突入したタージュは、親指を立てていた。 「……何してるんだ?」 「いや、何かやらなきゃいけないような気がして……」 程なくして、ウィリーとタージュも渡りきった。 カーマインも、いつの間にか対岸にいる。 「ふーっ」 「お疲れ様。どうにか渡れたわね。」 酸のプールを渡りきった一行は、市街地と思しきエリアに到着した。 至るところに精神力を削ぐ力を持つゼリーが仕掛けられていた。 「うぇ……」 「露骨に時間稼ぎに来た罠だな。」 この中を歩くのは心境的に遠慮したい気持ちはある。 「さっき廃案にした俺の竜に乗る方向で行きたいところだな……アリシア、乗れ。」 「そうだな、魔法使いのアリシアが魔力を削られるのは避けたい。」 「二人にはなんとなく申し訳ない気がするけど……」 「構わないさ。」 そして、ゼリーの中に足を踏み入れるウィリーとタージュ。 「……イチゴ味だ、これ。」 「糖分がまた別の意味で精神的に来るな……」 歩みを止めるわけには行かない。精神力を徐々に削られていくがそれは必要経費だと割り切っていく。 アリシアを運んだインバースは次にウィリーを竜に乗せて駆け抜けていく。その間もタージュは少しずつ歩みを進めていく。 しばらくしてゼリーの中から脱出したタージュはまた一息着いた。 「ふー。こういう時だけは己の重装備が少し恨めしくも思ってしまうな。」 その先に、高品質のポーションを発見した4人。 「これはありがたい。」 「建設中に置いてったのかしら?」 考えていると、地響きと共に警備兵数名に発見されたらしい。 後ろにはゴーレムを数体従えている。 「む、敵か」 「どれだけ時間稼ぎに来てるかわからないが、早いところ蹴散らそう」 「だな。」 「よし、じゃあまず……!」 アリシアは素早く敵を分析する。警備兵と同じくあくまでもアリシアたち「侵入者」の足止めを目的としたゴーレム達だった。 インバースが真っ先に突撃して槍でなぎ払う。警備兵は一撃で吹っ飛ばされ、ゴーレムたちも損傷は激しい。 「辛うじて稼動してるってところかしら?」 「よし、行け!ビーム、ホイール!」 ビームとホイールの攻撃によってゴーレムたちは更なるダメージを被り、最早壊れる寸前にまで追い込まれている。 「じゃあ、後は私が……!」 アリシアの炎で、ゴーレムたちが破壊されるまでに時間はかからなかった。 その後、アリシアたちは工場と思しきエリアにたどり着いた。ある一定のポイントから、警報が鳴り響く。 「……敵だ。」 『それ』にいち早く感づいたのはカーマインだった。 警報音に混ざって聞こえてくるのは空を切る羽ばたきの音だった。 カーマインが振り向いた方向からは、巨大な機械のドラゴンが突撃してくる。 「アリシア、皆、ここから先は4人で行くんだ。奴の相手は私達がしよう。」 「……任せても、大丈夫かしら?」 カーマインは不敵な笑みを浮かべ、懐から一枚のカードを取り出す。 「任せたまえ。少しばかり気取ったやり方だが、こういう奴に『ふさわしい相手』を用意してやろう。」 カーマインはカードを空に投げると、そのカードが光輝いてゲートが開く。 中から現れたのは巨大なエアリアルドラゴン……ポチと、ポチに乗ったクリムゾンとペッパーだった。 カードに書かれていたのはテレポートのマーキングであり、これを持ち歩くことでカーマインは好きな場所に離れた仲間を呼び寄せる事ができるらしい。 ポチは咆哮を上げて機械竜に猛然と襲いかかる。 「事の顛末を見届ける責任が私たちにはあるが、それ以上に大事なのはアリシア、フィンの子孫である君をホロコースト元へ送り届けることだ。 アリシア。君の祖先の無念を君の手で晴らしてくれ。頼んだぞ。」 そして、カーマイン達の戦いの場を後にしたアリシア達は途中一度だけ小休止を挟んでこれまでの戦闘や罠での消耗を回復した。 そして、最終目標と対峙する事となる。 見上げるような巨大な機械……そこにあるものがホロコーストだと理解出来た。 そして、その周辺には惨殺された死体がいくつも転がっていた。 「ねえ、死火山て暑いものだっけ?」 「確かに、完全な死火山のはずなのにここは随分暑いな。」 「おまけにこの遺体、全員が力任せに体の各部分をもぎ取られたようだ。一体、どんな馬鹿力の持ち主が……」 「……これ、火山の熱じゃないわ。」 「ああ、熱の発生源はホロコーストそのものだ。」 「砲身の冷却中ってわけか。見たところニックマンさんの推察は当たっていたって事だな。」 4人に近づいてくる足音が聞こえてくる。 その足音の主はオルガだった。オルガはホロコーストに向かう砂塵の鎖に立ち塞がるように立っている。 「とうとう、この場に来たのね。何度も何度も本当……目障りな連中だわ。」 かつてのように戦闘スーツを着てはいるが、そのスーツは血で赤く染まっていた。 この場の惨状を起こした張本人が誰かというのを、その赤いスーツが何よりも雄弁に物語っている。 「この場の惨状は、お前の仕業だな?オルガ。」 「それが、何?」 「グレンさんが如何に気が触れていてもこの惨状を見逃すとは到底思えない。グレンさんはどこだ?」 「言うと思う?グレン様は私のもの、誰にも渡さない ……喚きたいなら勝手に喚いてなさい。」 話を続ける気はない、と言う態度のオルガにウィリーは軽蔑しきった眼差しを向ける。 しかし、オルガはそれすらも気に留めることはなかった。 「王女様は……あの穴の中か。」 ホロコーストの「左胸」に空いた、大きめの穴。明らかに最近開けられたそれが、この場にいないスカーレットの居場所を指し示している。 「ホロコーストは発射準備に入ったわ。もう一度地響きが起きてからそう時間が経たないうちに発射されるでしょうね。 今更どこが吹き飛ばされようとも私には最早意味のない事。王女様を助けたいと言うのなら、私を倒すことね。」 「言われるまでもなくそうするさ。これ以上、俺のような者を出すわけにはいかない……ここで決着を付けよう。」 「……もっとも、『できるのなら』だけど。」 戦闘態勢を取ったオルガと、先ほど戦ったものと同じタイプのゴーレムが数体、奥が現れる。 ホロコーストを止めるために……アリシアたちの最後の戦いは始まった。 オルガは『冷血党の最高戦力』であり、彼女を越える戦闘能力を有しているのはこの場には存在しない。 そして、最大の危険な要素であるホロコーストを破壊するためにはオルガという最後の障害を取り除かなければならない。 ゴーレムをあっさり破壊した4人は、オルガへと攻撃を加えていく。 いかにオルガと言えど4対1では不利なのか、ダメージを受けてく度に息が上がっている。 「随分ダメージを受けたようだが、降参するのなら今のうちだぞ?」 「こ、これは……薬が……切れただけ……ダメージを受けてるですって?笑わせないで。」 ビームとホイールのコンビネーション攻撃がオルガに炸裂し、オルガは数歩後ずさった。 「流石にこのままでは勝てない、か。」 そう呟いてオルガは全身に力を込める。そんな時に地響きが起こった。 「ホロコーストのエネルギー充填が始まった……」 「今の地響きがそれ!?」 「スカーレット王女の命は、持って数分と言った所かしら。 邪魔はさせない……!止められるものなら止めてみるがいいわ……!」 オルガが全身にさらに力を込めると、オルガの姿がみるみる変わっていく。 「まさか自分自身を改造していたのか……」 「私ノ研究ノ集大成……『冷血党最強ノ怪人』ノ力ヲ見セテヤル……!」 「冷血党最強の怪人」、オルガの怪人形態は象ほどの大きさのタコの姿をしていた。 「タコと言うよりは小型のクラーケンみたいなもののようだな。」 「アリシア、これが本当の最後の戦いだ。」 「ええ、行きましょう。」 「僕たちの全力を出し尽くしてやつを倒そう。」 アリシアは素早くホロコーストとオルガを分析する。 オルガが怪人と化した時に、持っていたショットガンは体内に埋め込まれたようだった。 また、ホロコーストへと近づくためのルートにはオルガが立ちはだかっている事もあり、スカーレットの魔力が尽きる前にオルガを倒す他ないと結論づける。 しかし、オルガも冷血党最強を自称するだけでありそう簡単には攻撃を通させることもなかったが、そこにアリシアの炎がオルガを襲う。 最高級ルビーを媒介にし、使える魔力をすべてつぎ込んだ炎はオルガに大きなダメージを与え、タージュも仲間の盾として怪人形態のオルガが吐く酸のブレスを防いでいく。 「く……この「鎧」でも、あまり長時間は持たないな。」 「……制限時間は3分と言ったところね。それ以上かかると、スカーレット様が持たないわ。」 「3分以内にオルガを倒せばいいってことか。わかりやすくていい。」 スカーレットの命が尽きるタイムリミットは刻一刻と迫っていたが、砂塵の鎖の嵐の如き猛攻はそのタイムリミットをまるで物ともしないと言わんばかりにオルガの体力を削っていく。 オルガは自身を小型のクラーケンへと改造していたが、それが盲点となり、『人間』であった時と比べて回避能力が著しく低下していた。 「硬いな。防御にエネルギーを割いてるのか。」 オルガの「皮膚」が硬い物質に変換されている事に気づいたインバース。 だが、それはただでさえ著しく低下している回避能力を更に下げるものであり、オルガが回避行動を放棄したに等しい。 その証拠に、オルガの足元は石膏像のように白くなっている。 「フフフ……コノママ防御力ヲ高メレバ、オ前達ノ攻撃ガ徐々ニ通ジナクナッテイク。」 「でも見るからに動けなさそうじゃない。回避を放棄したんでしょ? 攻撃が当たりやすければ、私は威力に全力注ぎ込めるのよっ!!!」 「だが、僕の攻撃があまり通じなくなってきたな。僕は皆のサポートに専念しよう。」 オルガの反撃のブレスは真っ直ぐアリシアを狙っていた。 アリシアをかばい、防御障壁を展開したタージュはある事に気づく。 「うん?あいつ、ブレスの範囲が狭くなってるぞ?」 「グウ……ウウウウウ……!」 「徐々に知性も低下してるみたいね。」 「体組織を硬質化させてる影響か?見るに耐えんな。」 「つまらん欲望に飲まれた結果だ。こいつがしてきたことを許すつもりはないが、せめて俺たちで介錯してやろう。」 「……僕はもう、持てるものを使い尽くしちまった。だが、まだ行けるな?アリシア!」 「勿論!」 オルガの酸のブレスの間隔が開いた隙を突き、更に攻撃を続けると、 オルガの体の白い部分は見る見るうちに足元だけでなく、下半身全体へと広がっていく。 「益々防御力が高まってきたみたいね。だけど……!」 「アリシアが魔法を詠唱する時間は稼ぐ!」 インバースがオルガの注意を引いていく。 「行け!」 「アリシア!」 「終わらせろ!」 アリシアの、この物語での最後の攻撃……それまで見なかった巨大な火球を目の当たりにしたオルガは一度は回避体制を取ろうとするが、自身の足が硬質化の影響で動かなくなっていることに瞬時に気づくと、全身を硬質化させて堪える事を選んだらしい。 オルガの全身が見る見るうちに白く変色していく。 「はああああああーっ!!!」 火球は、ホロコーストから発せられる物をも越える熱量でオルガに直撃した。爆炎の中オルガはそれでもなおそこに微動だにせず存在していたが、何かに苦しんでいる表情を浮かべる。 「バ、バカ……ナ……ワ、私ノ……身体……ガ……」 オルガの全身が白く変色していた。そして、顔や身体全体ににヒビが入り、ガラスでも砕けるかのように細かく砕け散っていく。それは、間違いなく「冷血党最強最後の怪人」の「最期」だった。 「君はずっと、求めるものを間違えていたんだ……」 そう呟いたウィリーは、砕けたオルガの「破片」から「白衣の欠片」を発見した。 「これは……そうか、そういう……事か……」 ウィリーはそれが何を意味しているのか、一人推察していた。 恐らくそれは当たっているが、当たっていて欲しくなかった結果だった。 「……後は、お願い……」 「アリシア!」 ウィリーは咄嗟に全身から力が抜け、その場に崩れ落ちるアリシアを支える。 「しまらないわね。」 「いや、アリシア。君が居なければこの戦いに勝てなかった。」 「ああ。……タージュ、道は開けたぞ!乗れ!」 「ああ!後は任せろ!」 タージュは酸のブレスで損傷した鎧を放棄し、身軽な状態でインバースの竜にまたがった。『最短距離』を……即ち、垂直にホロコーストを駆け上がっていく。 「王女様!」 穴の中に向かって叫ぶ。スカーレットの反応はない。 義手と義足が外されて導線が接続されており、彼女からこれを分断すれば良い。 直感的にそう判断出来た。それほどにホロコーストの動力炉の構造は単純なものだった。 タージュは剣を用いて動線を斬り払い、意識のない状態のスカーレットを受け止める。 スカーレットは衰弱こそしているが、生きている事を確認出来た。 「良かった……」 足場を戻ってきたタージュの安堵した表情から、3人はスカーレットの救出が成功した事を察する。 小休止を挟んで動けるようになったアリシアは、砕け散ったオルガだったものから眼鏡を拾っていた。 それが意味する事を理解しているためか、誰も何も言わなかった。 「ニックマンさん……依頼は果たしました。 それじゃあ……帰りましょう。この戦い、私達の勝利よ。」 砂塵の鎖がホロコーストのいた場所から立ち去ったその瞬間、落石でそれまでいた場所が完全に塞がれてしまった。 まるでホロコーストが二度と復活しないよう永久に封印するかのように。 スカーレットがホロコーストから切り離されたのと時を同じくして…… 「終わった……か。」 ニックマンが手に持っていた機械のランプが消えた。 彼は元々生活していたテントに戻り、テーブルに山積みになった紙束や手記を前にそう呟いた。 「グレン殿……貴方は道を誤った。奥方を取り戻すという目的を忘れ、ホロコーストの威力に取り憑かれた事が全ての悲劇だった。そして、オルガ……親より先には逝かせまいて。」 そう言い残して、ニックマンは薬をあおり、その場に倒れ伏す。 倒れた手の先には、エルダナーンの男性とヒューリンの中年男性、そしてヒューリンの男性に抱かれて笑顔を浮かべる幼い女の子の写真があった。 途中でカーマイン達と合流した砂塵の鎖は、無事に火山の入口に到着した。 そこでは冷血党の残存勢力を制圧したルージュとアポロ達が待っていた。 「ホロコーストは、破壊できたようですね。」 「ええ。私達が立ち去った直後の落石で物理的に使い物にならなくなったと考えて良いでしょうね。 それに、あれを今から掘り起こすのはちょっと無理があるし。」 「ところでアリシア……グレンは……?」 「女王陛下……これをご覧下さい。」 ウィリーが差し出したのは、オルガの「欠片」から見つけ出したグレンの白衣の破片だった。 「これはオルガを倒した後発見しました。恐らくはグレンさんが着用していた白衣の破片だと思割れます。 そして、僕たちが発見できたグレンさんの『痕跡』は……」 「そう……」 言葉を詰まらせるウィリーの様子と、白衣の欠片を見たルージュは何が起きたのかを察したようで、それ以上深くは聞かなかった。 「ありがとう。ですがこれはあくまでも私個人の感傷です。今は、ホロコーストを破壊し、スカーレットが無事でいてくれた事を喜びましょう。」 ささやかな祝杯を挙げたその夜。 その場を離れたカーマイン、ペッパーとポチ、クリムゾンに気づいたのはスカーレットとルージュだった。 「ルージュ、スカーレット。私たちはアヴァロンへ戻ろうと思う。」 「カーマイン先生、どうして?」 車椅子に乗ったスカーレットが尋ねる。 「お前たちのご先祖様……マゼンタに、事の顛末を話してやらなければならん。それと、フィンにも。 今後私達がここに戻ってくることはまずないだろう。今生の別れだと思ってくれて良い。」 教え子と仲間の子孫を慈しむような目線で語るカーマイン。 その表情が真面目なものに変わると、母と娘は表情を改める。 「今後、この国を立て直すための本当の戦いはこれから始まるぞ。 だが、私達は遥か遠くからお前たちを見守っている。無論、マゼンタもな。」 「おじさま……お元気で。」 「ああ。」 そして、一条の光と共に、3人の「アヴァロンの戦士」はあるべき場所へと還っていった。 「ニックマンさん」 そう呼びかけるのはウィリーだった。 ウィリーは事の顛末を報告するべく、ブラックハウンドの隊員からニックマンのテントの場所を聞き、訪ねていた。 しかし、ニックマンの気配がない。 「!!!」 テントの中に倒れたニックマンを発見したウィリーは慌てて駆け寄り、脈を確認する。しかし、脈は既になく、そこには冷たい骸となったニックマンがいた。 「そうか……本当に終わってしまったか……」 少なからずの衝撃を受け落胆するウィリーは、テーブルに置かれた大量のメモ書きと、ニックマンがしたためた遺書を発見する。 「私は、私の罪を命をもって償えるとは思っていない。しかし、これは私のけじめであり我侭でもある。 この机の上には私の知りうるホロコーストに関しての全ての資料を残した。 願わくば、私が残したこのメモ全てを、女王陛下の元へ届けてもらいたい。 ここには、女王陛下の知らぬグレン殿の『40年』が記されている。」 後にルージュ自らそれを見聞したところによれば主に医術方面でグレンの錬金術は活躍し、物資の乏しい砂漠地域での薬学や義肢製造技術の発展に大いに貢献していたこと、今後国を立て直す為に信頼できる商人仲間や医療技術を売り込みたい医者などの名簿も記載されている。 罪滅ぼしの意図は多少なれどあったかもしれない。そこには戦後処理に必要なものが全て揃えられていた。 「これから、どうするかな……」 兵舎の一室でインバースは自分の今後についてを考えていた。 「インバース、ちょっといいか?」 入ってきたのはアポロ達3人の兄弟だった。 「インバース。たしか君は故郷がホロコーストによって消滅したんだったよな。」 「ああ。そうだが」 「ならば、俺達と共に来ないか?これから治安維持や警備等、戦後の混乱を抑える為にもまだまだやることは沢山ある。兵の手がいくらあっても足りないんだ。まして、お前のように優秀な戦士なら尚の事だ。 我々と共に来てくれないか?この国のために今は一人でも多くの手を必要としている。」 「……明確にやりたい事があるわけでもないしな。こういう戦いに身を投じるのも悪くない。」 「では、よろしく頼む。」 ここに新たなブラックハウンドの戦士が誕生した。その槍捌きはブラックハウンド内でも随一と評され、長きにわたって相棒の竜と共に活躍することとなる。 「失礼します。」 「どうぞ入って……座ったままで、ごめんなさいね。 まだ、新しい義手と義足が出来ていなくて。」 「具合は如何ですか?」 「手足には見ての通り代替品がついてますが、これが思うように動かせないもどかしさを感じるけど、他はすこぶる調子が良いですよ。」 「それは何よりです。これで、自分が小さい頃救われたご恩返しは果たせたかと存じます。」 「恩も何も、私はブラックハウンドを率いていたものとして当然のことをしたまでです。それよりも貴方達砂塵の鎖の皆様の活躍の方が」 「例えそうだとしても、あの時貴女に助けていただかなければ今日の私はありません。改めてお礼を言わせて下さい。」 「そんな。むしろ私達こそ貴方達にお礼を言わなければなりません。」 「では、一つ私の我が儘を聞き入れて頂きたいのですが。」 「何でしょう?」 「戦いが終わり、今後、形は違いますが新たな戦いが始まる事でしょう。 これからも御身をお守りしたいと考えております。この身を傍に置いてはいただけませんか?」 タージュの言葉に迷いはない。スカーレットは確かな意志を感じた。 「わかりました。ですがひとつだけ。 私個人だけではなく、この国のために力を尽くしてください。」 「わかりました。では貴女様と共に、この国のために戦いましょう。」 「よろしくお願いしますね、タージュ。」 タージュはスカーレットの居室を後にすると、その後もう一人の「礼を言うべき人物」を訪ねた。 「……随分と、けったいな鎧に変わったな。」 唖然としてタージュが装着した外部装甲を眺める鍛冶屋の店主。 「外側だけさ。中身は作ってもらった鎧のままだよ。」 「考えたものだな。ゴーレムの装甲を外殻のように纏わせたのか。」 「こんな無茶が出来たのもおっちゃん達の鎧のもともとの出来が良かったおかげさ。 おかげで、俺は守りたいものを守ることが出来た。ありがとう。」 「……国民として、礼を言うのは、俺たちの方さ。 女王陛下だけじゃない、悪党どもから王女様まで救ってくれた。 そのことをいち国民として感謝するよ。ありがとう。」 あらたまって礼を言われることに、タージュは少し驚いたが彼は心からの感謝を述べていた。 「そうだ。俺、近衛兵としてこの国に残る事にしたよ。」 「おう、そうか。」 作業を始めるべくハンマーを振るう店主。 タージュがその姿を確認するとその場をあとにしようとすると、振り向くことなく一言告げた。 「たまには、顔を見せに来いよ。」 「ああ。」 かくしてタージュは今後の戦いを王女スカーレットを守り、ひいては国を守るための戦いに身を投じる事となった。 タージュの強固な鎧は国を守る盾として、近衛兵のシンボルとなるのにそう時間はかからなかった。 「行くのね?アリシア。」 王都の城門前でルージュは猫の姿に戻ったアリシアに告げる。 「ええ。私の『両親』はきっと何処かにいる。会いに行ってみたいの。」 「てっきり女王陛下と一緒に生活するものだと思っていたんだが、寂しくなるな。」 「まあ、アリシアの選択だ。俺達は国に残る者として、見送ろう。」 「ああ。しかし、ウィリーは……」 「忽然といなくなっちまったな。」 「ニックマンさんの遺体を発見したのは彼でした。 もしかしたら……グレンを探しに行ったのかもしれません。 でも、それは私のためではなく自分のため、そして犯した罪を償わせるため、でしょうね。」 「もし、旅先で出会うようなことがあったら、よろしく伝えてくれよ。」 「ああ、離れていても俺達は、仲間だ。」 ルージュはアリシアの頭を撫でる。 「アリシア……ここはもう一つのあなたの家のようなもの。 あなた用のドアは開けてあるから、たまには顔を見せに来て頂戴ね。」 「ええ……それじゃあ、そろそろ出発するわ。」 ルージュの手がアリシアから離れ、彼女の新たな旅が始まった。 まずは海に出ようと北へ向かっている途中、アリシアは森に差し掛かった。 「懐かしいわね。ここから、全てが始まった。」 茂みから物音がする。そこにいたのはヴァーナの男性だった。 『彼』は身をかがめてアリシアの前に手を差し出した。 「インバースもタージュも、それぞれの道を見つけてそれに向かって歩み始めた……貴方は、行く所がないのかしら?」 それが良く知る人物だったからこそ、躊躇せずに猫の姿のままで声をかける。 「ああ……彼らはなるべくしてなったと思っている。 そして、彼らはその選択から自分自身の更なる往く道を見つけられるだろう。でも、僕は……僕が戦ってきたのは、冷血党としてのけじめをつけたかったのかもしれない。 グレンさんやオルガの事に拘ったのもきっとそういう事だったんだろう。 だが、あの白衣を見て確信したよ。グレンさんはもういない。グレンさんだけじゃない。オルガは僕らが倒したし、ニックマンさんも亡くなった。 今の僕には何もない……そう思ったら、ここにいた。 君は、これから何処に行くんだい?」 「自分の本当の意味でのルーツを探す旅を続けるつもりよ。 まずは、両親を探そうかと思って。」 「では……その旅に僕も同行させてくれないか? 君と共に往く事で、僕の人生の新たな意味を探していきたい。君にとっては重荷かもしれないが、僕にとって君は僕を導いてくれた人だから……」 アリシアは猫の姿から再び人の姿へと戻った。 「一緒に、行きましょう?」 「ありがとう、アリシア。君と出会えたことが僕にとって最大の幸運だったのかもしれない。 君と出会えて、本当に良かった。」 「それに……この国の常識を、一つは変えたいわね。」 「そうだな。僕も同じことを考えていたが、それはきっとこれから覆されていく事だろうね。」 アリシアとウィリーは森の中を共に歩き始めた。 アリシアとウィリーの旅路の果てに何が待つのか、それは二人だけが知る…… かくして、マリスが遺した『悪意』ホロコーストと、マゼンタ達の願いとフィンが遺した『可能性の集大成』アリシア。 遥か過去よりの因縁の闘いはここに終わりを告げた。 その後、ルージュとスカーレット母娘、そしてアポロ達三兄弟を始め国の中枢を担うものたちは長きにわたって善政を執り行っていった。 ルージュもスカーレットも政を独断で判断することはあまりせず、ブラックハウンドの新隊長に任命されたアポロと、副隊長を任されたヘラクレスとアリエスの三兄弟はインバースやタージュ達と共にこの母娘を支え、治安維持や国の健全化に努めた。 また、ニックマンが遺した資料は有識者によって特にこの国の医療の発展に大いに活躍する事となる。 砂塵の鎖の名は救国の英雄としてレッドウルフに並び称され、国軍の諜報部隊の通称は彼らにあやかって「鎖」の文字を戴くことが伝統となった。 そして、「紫の猫」の存在は人々に「不幸の象徴」ではなく、「勇気と可能性の象徴」として長く愛されることとなったと言う。 アリアンロッド コールドブラッド 完
https://w.atwiki.jp/trio/pages/171.html
Phase3c-01 「さて・・・どうすっか・・・」 オルガは、一人言をもらした。 にしても、ちょっといいか?と思う新刊やらも全部買えるというのは悪くない。 アズラエルのおっさん気前良く給料くれたもんだ、とオルガは思った。 実際には、危険地帯で活動するMS乗りの傭兵に払われる金額は結構な額であり、 6人の場合は更に多額であった。 そのため金銭感覚がちゃんと身についているとは言いがたい彼等に、 それを全額渡すことのリスクをアズラエルは考慮して、 本来払うべき金額を ほとんど渡さずに、6人名義で銀行に預けたり投資信託にまわしたりしていて 世間並みの給料しか 渡していなかったのだが、そんなことをオルガは知らない。 スティング達との待ち合わせ時間まで、喫茶店にでも入って読み始めても良いのだが、 そんな気にはならなかった。 理由は分かっている、血が猛ったままだからだ。久々の実戦だった。 生と死を分ける一瞬の連続。 敵の撃ってくるビーム・弾を避け、防ぎ、相手を撃破する。 その度に血が熱くなる、あのスリルと快感は 日常ではとても味わえはしない。 仲間と馬鹿をやるのも、小説も好きだが戦場という場所がオルガは好きだった。 オルガは戦場において、相手を殺すことに欠片ほどもためらいをもたない。 戦場という場所に出てくる以上、 そいつはどんな理由があろうが、 「人に殺られるよりは人を殺るほうがマシ」という選択をしたのであって、 生きるか死ぬかは己と相手の技量次第。 出てきた以上、泣き言をぬかすんじゃねえ、オルガはそう考えていた。 これは、ラボで育ったせいか?改造されたせいか?それとも生まれつきか?と ごくたまに考える時はあったが 実際、戦っていると血が猛ってしょうがないのだから仕方ない。 そんなことを考えて歩いていると、目の前に身なりのよくない奴等が三人立っている。 うぜえなあ・・・と思っていると道をふさいできた。 後ろにも数人の気配、改めて周りを見渡すと裏道である。 考え事をしていたせいで迷い込んでしまったようだ。 ため息がもれる。叩きのめしてもいいが、ナタルやアズラエルに迷惑がかかっても困る。 なので、前の3人の頭を飛び越えてやった。相手の頭の上を飛んで着地。 自分より強い奴にケンカを売る奴はいない。 なので、ナチュラルより遥かに強い、コーディネーターのように 振舞ってやれば襲い掛かってこないだろう、と踏んだのだが・・・。 「コーディーネーターだと・・・。待てオイ!」 「この・・・コーディーがあぁぁあ。」 「この化け物!」 どうやら、逆効果だったらしい。いきなり、ナイフで襲いかかってきた。 普通、どれほど鍛えた人間でも刃物を見れば体が多少硬直するし、 複数で刃物を使ってくる大人数に 対応しきれるような人間などいない。 だが・・・オルガ達の育ったロドニアのラボは 修練によりそういう、 不可能とも思える状況に対応できる力を身につけられた者だけが生き残れる場所。 そしてオルガはそこで生き残った者。 とりあえず一番前の奴の顔に本の入った袋を投げつける。 袋を手で払った相手の顔面にオルガの靴がめり込んだ。 鼻血を吹き出して倒れる前の奴を反射的に支えてしまい、動きの止まった奴の顔面に、左フックを叩き込む。手ごたえ十分。 そのまま回転して、三人目に右の後ろ回し蹴り。 素人相手だけあってやたら鮮やかに決まった。相手が吹き飛ぶ。 残りは4人か・・・。オルガの顔に次第に狂気が宿り始める。 「こ、この化け」 なにやら戦闘中に口を開く馬鹿に、瞬時に間合いを詰めて顔に右フック一発。 (バカがぁ!歯を食いしばるってこともしらねーのか。大口開けやがって) 倒れた奴の後ろの奴がナイフで突いてくる。 (おせぇ!ナイフの製造ナンバーが読めちまうぜ?) 半身でかわして腕を掴みへし折ってやる。悲鳴をが聞こえた。 (何だぁ?喚いてる暇があったら、反撃してみろや!) そう思いながら前かがみになった相手の顔面に膝を入れる。 残りの二人はなにやら構えていたが・・・。 (ヘッそれで構えてるつもりか?ザァコが!とっとと) 「なあにやってんだよ?オルガ。」 「・・・クロト?」 その声でオルガは頭が冷えるのを感じた。いつの間にか、クロト・ブエルが 残りの二人の後ろに立っている。 とりあえず、クロトの声に振り返った残りの二人の近い方に蹴りを入れて失神させる。 最後の一人は喚きながら、クロトに切りかか・・・る前に、 クロトのとび蹴りを食らって吹き飛んだ。 「オイオイオイ、前歯と鼻が折れたんじゃねえか、今の奴?」 「人のこと言えるのかよ?そこに倒れてるのって前歯が全滅してる奴ばっかりだと 思うけどねえ。」 「・・・クソがぁ!!死ね化け物ども。てめえらのせいで、親父が、お袋が! 全部・・・全部てめえらのせいだ!! てめえらさえ、てめえらさえ、いなけりゃ。死ね!死ね!死ね!死ね!」 折られた腕の痛みで失神できなかった奴が、口と鼻から血を流しながら喚き散らす。 考えてみれば、死んだプラントの議長の取った政策により多少緩和したとはいえ、 3年前の大戦、そしてユニウス7の落下によりコーディネーターに失わされた物がある人間の恨みが、消えるには速すぎる。 そしてナチュラルの潜在的なコーディーに対する恐怖と憎悪は消えたわけではない。 だが多少理不尽なものを感じ、オルガは無駄と知りつつ言ってしまう。 「俺達はコーディネーターじゃねえ。」 「ふざけんな、化け物!さっさと宇宙に帰りやがれ。消えうせろ!死ね!」 やはり、まったく信じずに怨嗟の声を上げ続ける男に、それ以上何か言う気も失せ、 オルガはクロトとその場を後にした。 Phase3c-02 「ったく、何でケンカなんかしてたんだよ?」 「相手が襲いかかってきたんだから仕方ねえだろが。何もしてねーのによ。」 「ふ~ん。相変わらずコーディネーターって嫌われてるよねえ。」 「ああ。」 迷惑なことだ、とオルガは思う。 ああいうコーディネーターに対する憎悪が戦争を生み、コーディネーターと 戦うために 俺達みたいなのが生み出された。ナチュラルのコーディネーターに対する憎悪、嫉妬、 これがある限り俺達みたいなのはまた出るだろうな・・・とオルガは思う。 (化け物か・・・) 「おい、クロト。」 「何?」 「俺達って、何なんだろうな。」 「仲間。」 いや、そういう意味で言ったんじゃねえ・・・と言いかけてオルガはふと思う。 こいつ等と仲間なら何であろうが、別にいいか、と。クロト、シャニ、スティング、 アウル、ステラ、 みんないい奴等だ(こんなこと口が裂けても本人たちには言えないが) コーディネーターだというだけでナイフで襲って憎悪の言葉を吐き散らす、さっきのような奴等じゃない。 「・・・仲間だな。」 「なんなんだよ?」 「別に、何でもねーよ。もたもたしてんな。オラ行くぞ。」 「何だそりゃあ?そっちが、待ち合わせ場所にこなかったんだろ。 探してたのはこっちだぜ。」 「・・・そういや、お前と待ち合わせしてたっけな。」 「忘れてたのかよ?」 「うっせーよ。たまには忘れる時ぐらいあらあ。」 「逆・切れ!」 「わーったよ。侘びに何か奢ってやらあ。好きなもんいえよ。」 「おお?、珍しく太っ腹だね。じゃあさ・・」 そんなことを話しながら、2人は通りを歩いていく。 スティング達や一人残ったシャニはどうしてっかな・・・とオルガは思った。 天気は晴れ、涼しい風は心地よく頬をなでていく、そんな午後の出来事であった。
https://w.atwiki.jp/cfvg/pages/78.html
オラクルシンクタンク - ヒューマン グレード〈3〉 ノーマルユニット (ツインドライブ!!) パワー 10000 / シールド - / クリティカル 1 自【V】:[CB2]このユニットのアタックがヒットした時、コストを払ってよい。払ったら、1枚まで引き、手札から2枚までソウルに置いてもよい。 永【V】:ソウルに《オラクルシンクタンク》のカードが6枚以上あるなら、このユニットのパワー+3000。 フレーバー: 順位 選択肢 得票数 得票率 投票 1 使ってみたいと思う 3 (60%) 2 強いと思う 2 (40%) 3 弱いと思う 0 (0%) 4 面白いと思う 0 (0%) その他 投票総数 5 コメント
https://w.atwiki.jp/mekameka/pages/1015.html
ロストウィンズ / LostWinds スクウェア・エニックス 2008年12月24日 Wiiウェア 1,000ポイント ファンシーでファンタジーな世界観のA・ADV 風の精霊の力を借りて謎を解いたりしていきましょう 続編 ロストウィンズ ウィンター オブ メロディアス
https://w.atwiki.jp/vip_witches/pages/2068.html
アウロラ「……とまあ、こういうところです少佐」 ラル「了解。わかった」 報告を聞き終え、深くため息をつく。 ラル「ああ、もう夜も遅いし、下がっていいぞ。ご苦労様」 アウロラ「はっ、では失礼いたします」 敬礼をしてアウロラが執務室から退室する。 ラル「やれやれ……ストライカーが壊れるのも困るが、隊員に大怪我される方が困ったものだ」 ドアが音を立てて閉まると、ぼやく。 憂鬱そうに再びため息をつくと、ドアがノックされた。 ラル「入れ」 ロスマン「失礼します」 ラル「なにかあったか? 私としてはもう悪い情報は聞きたくないんだが」 ロスマン「ならよかった。今回ばかりはいい情報よ」 ラル「ほう、そりゃよかった。クルピンスキーが更生でもしたか?」 ロスマン「ふふっ、残念だけど違うわ。あのニセ伯爵が更生したらいい情報って程度じゃすまないもの」 ラル「それもそうか」 にやりと笑うラルと、手を口元に当ててくすりと笑うロスマン。 ロスマン「ドクターメンゲレから連絡が入ったわ。俺君が目を覚ましたらしいわ。それと、双子ウィッチの研究をしたいからハルトマン姉妹に会わせろって」 ラル「ほう!」 執務机から思わずラルは身を乗り出す。 ラル「それはよかった。あ、双子の件についてはスルーしろよ」 ロスマン「当たり前じゃない。私のかわいいハルトマンをあんな変態ドクターに渡す気なんて毛頭ないわ」 ラル「だろうな、お前は溺愛していたからなぁ」 ロスマン「で、溺愛って……そこまでじゃないわよ」 ラル「どうだか」 意地の悪い笑みを浮かべ、ラルはロスマンをじっと見つめる。 ラル「クルピンスキーの影響でハルトマンがぐーたらになった時に、涙目で私とバルクホルンに相談してきたのを忘れたとは言わせないぞ」 ロスマン「そ、それは……」 ラル「厳しい曹長が『私の、私のハルトマンがニセ伯爵のせいで……』って言ってたなぁ」 ロスマン「やめてよ、ラル。そんな昔のこと」 ラル「でも、クルピンスキーのおかげで固さも抜けたのか、ぐんぐん才能を発揮していったんだから、あいつは困ったもんだよなぁ」 ロスマン「まぁ、それは否定できないわ」 ラル「でも、保護者としては複雑な気持ちか?」 ロスマン「んもぅ……」 ほんのり顔を赤くして、顔を逸らすロスマン。 それを見て満足したラルは、うんうんと頷くと、ゆっくりと席を立った。 ラル「さて、それじゃあ俺のところへ行って少し話をするか」 ロスマン「……」 抗議の意思の籠った視線を向けられるが、ラルはどこふく風。 さっさと執務室を出て行ってしまう。 502の基地の医務室。俺は医師から話を聞いていた。 メンゲレ「あれだけ酷い怪我だったからね、当分は左腕を使えないよ」 俺「ま、しゃーないっすねぇそりゃ。左腕以外は大した怪我がないだけもうけもんっすよ」 メンゲレ「確かに、聞く限り相当無茶やったらしいしね。まあ一応念のために今晩は医務室に泊まっていきなさい」 俺「わかりました」 メンゲレ「あ、そうだ」 俺「なんすか?」 メンゲレ「扶桑には、双子のウィッチってのはいないのかい?」 俺「双子の、ウィッチ?」 メンゲレ「そう! 双子だよ、それもウィッチの!!」 ずいっと顔を寄せてくるメンゲレ。 なぜか目の輝きがおかしい気がして、俺は思いっきり引いていた。 俺「い、いや。俺の知る限りじゃ、いないっすね……」 メンゲレ「…………そうか」 心の底から残念そうに、メンゲレは身を引いて椅子に座り直した。 メンゲレ「あ、でももし見つけたら是非私に一報くれてくれたまえよ!」 俺「は、はぁ……」 ラル「そいつの双子談義は無視して構わないぞ、俺」 医務室のドアが開かれると同時に、ラルが呆れた声で言った。 俺「あ、隊長」 ラル「おう、俺。案外元気そうだな」 メンゲレ「こりゃこりゃグンドュラ君! 無視していいとはなんだね無視していいとは!」 にこやかに笑って、俺の方へ歩いてきたラルだったが、その直前でぷんすかと怒ったメンゲレに道をふさがれた。 ラル「言葉のまんまだが?」 メンゲレ「君はわかっていない! 私の医学へかけるこの熱き情熱と歴史的意義が!!」 大仰な身振り手振りを入れて説明するメンゲレだが、ラルは面倒くさそうに手のひらを下に向けてストップをかける。 ラル「あーはいはい。すまないね私は戦うことしか脳がない航空ウィッチだよ。あと、すまないけど俺に話があるんだ、いいか?」 メンゲレ「ふんっ、まあいいよ。私の話は終わったからね。では、私は資料整理があるから、なにかあったら呼んでくれ」 口をとがらせた不機嫌そうな表情で、メンゲレは執務室から出て行ってしまう。 ラル「やれやれ……」 メンゲレが見えなくなると、ラルは肩を竦めた。 そして先ほどまで彼が座っていた椅子を引く。 ラル「すまんな、変な医者で。腕は確かなんだが、ちょっと実験実験うるさくてなぁ」 俺「ははっ、まあ実害さえ出なければ」 ラル「まあ、な」 お互いに笑いあうと、ラルは足を組んで椅子に座った。 綺麗な足が強調するように目の前に出され、つい目線が向きそうになるが我慢する。 ラル「とりあえず、大事がなくてよかったよ。腕以外は」 俺「すいません。当分、俺は穀潰しです」 ラル「なぁに、気にするな。怪我に関しては負けない自信があるぞ、私は」 なんでもないことのように言うが、かつてラルは大怪我をして、生死の境を彷徨い、復帰は不可能だとも言われたのに大空へと舞い戻った伝説的な女性なのだ。 今も、魔力繊維で編まれたコルセットを付けて空を飛んでいる程で、腕の一本など比較にならない。 俺「俺はまだまだ下っ端中尉ですからね、隊長にはかないませんよ」 ラル「ふっ、隊長の凄さがわかっただろう。……とまぁ、そういうことは置いておいてだ、シフトの変更などはこっちでやっておくからお前は療養に専念しろ」 俺「了解」 ラル「あと、他に何か聞きたいことなどあるか? 隊員のスリーサイズとか以外なら答えてやるぞ」 俺「それは残念」 にやりと笑みを浮かべるが、すぐに普段に戻る。 俺「作戦はどうなりました?」 ラル「成功半分失敗半分だな。かなりネウロイの航空戦力を叩くことには成功して、こちらへの侵攻を激減させることはできるだろうが、制空権を奪える程ではなかった。 ガリアが陥落してカールスラント・ガリア国境方面に戦力が振られているだろうから戦力は大したことないと踏んでた上層部は、戦略の見直しらしい」 俺「なるほど、大変ですねぇ」 ラル「まあな。で、聞きたいことはそれだけか?」 俺「あ、そうだ伯爵はどうなりました?」 ラル「ふーん……気になるか?」 「伯爵」という単語を聞いて、ラルはにんまりと気味の悪い笑みを浮かべた。 こっちをいじってくる時の師匠赤松とよく似た表情に、俺の脳裏に嫌な予感がよぎる。 ラル「まあ、そりゃ確かに体張って助けた王子様にしてみたら気にならないわけがないよなぁ」 俺「なんすか、その気持ち悪い呼び方は……」 ラル「だってなぁ、翼を失ったお姫様を墜落の危機から救い、その上襲い掛かる魔の手を一人で撃退したんだろ? よっ、色男!」 なにかを期待するような視線を向けてくるラルに、俺は呆れた表情を返す。 俺「そんなロマンティックなもんじゃないっすよ。それに、伯爵がお姫様って柄ですか……」 ラル「性格はそりゃ癖が強いってもんじゃないけど、あれはあれで女って感じのとこあるだろ?」 俺「ありましたっけ?」 記憶を色々と掘り返していく。 ――酒を一緒に飲んだクルピンスキー。 ――502女性隊員にセクハラするクルピンスキー。 ――正座をするもののあまり反省の色が見られないクルピンスキー。 俺(女性……らしさ?) 眉をひそめる俺。 その表情から内心がわかったのだろう、ラルが口に出す。 ラル「あれ? お前、いつだったか休暇にクルピンスキーと出かけた時、あいつを背負って帰ってこなかったっけ?」 俺「……」 言われると、勝手にその時のことが思い出されてしまう。 ――酒臭いかと思ったら意外にも甘く感じた吐息。 ――冬の寒さをも忘れる温かみと、柔らかさ。 ラル「お、なんか思い出してきたか?」 俺「ぐっ……」 否定できず、俺は逃げるようにラルから視線を逸らすだけしかできなかった。 くつくつと喉を鳴らしながら、ラルのにたにたとした笑みは消えることなく続いている。 ラル「はっはっは! ま、ほどほどにしろよ」 笑い飛ばすと、ラルは席を立つ。 ラル「ま、隊員が元気なのも確認できたことだし、私は帰るとするよ。しっかり養生しろよ」 俺「はいはい、了解しました」 ラル「ふっ」 やる気のあまりない俺の敬礼に、機嫌を悪くすることもなくラルは軽く手を振って、医務室から出て行った。 ドアが閉まり、足音も遠のいてしまうと、音はなにもなくなる。 俺「……寝るか」 特にやることもなく、怪我して気絶して目覚めてすぐのくせに出歩くわけにもいかず、仕方なく俺は寝ることにした。 俺「……ん?」 大して夜が更けぬうちに眠ったからだろうか、深夜の時刻に俺は廊下を歩く足音に目を覚ました。 カーテンを引き忘れていた窓からは満月の煌々とした明かりが部屋に差し込み、不便ない証明となっている。 俺「やれやれ、寝てばっかってのもあれなもんだなぁ」 それでも寝る以外に選択肢がないので、布団をかぶり直す。 しかし、外の足音が医務室の前で止まった。 なんだ、と思うと同時、ゆっくりと医務室の扉が開く。 クルピンスキー「……」 ゆっくりと部屋に侵入してきたのは、クルピンスキーだった。 俺「なに、やってんだ?」 クルピンスキー「わっ! なぁんだ、起きてたんだ、残念」 声をかけると、どうやらこちらが寝ていたと思ったらしく少し驚いていたが、すぐにいつも通りの表情になる。 クルピンスキー「寝てたなら、寝顔でも見てから起こそうと思ってたのに」 俺「そいつは起きててよかったぜ……」 やれやれと苦笑いを浮かべながら、俺は上半身を起こす。 クルピンスキーは椅子を見つけるなり、ベッド横へと移動させ座った。 クルピンスキー「もっと重傷かと思ったけど、君も結構丈夫だね」 俺「まあ、確かに目立つ怪我は左腕だけだからなぁ……それでも、カタヤイネンや、お前さん程じゃあないな」 クルピンスキー「ふふっ、私にはどうやら女神様がついてるらしいからね。いやぁ、モテる女は困っちゃうよ」 俺「はっ、他の女に手を出し過ぎて嫉妬されないように気を付けろよ、ただじゃすまないぜ」 クルピンスキー「そうだね、ご機嫌伺いはちゃんとしとくよ」 くすり、と笑みを零した。 月光に照らされたクルピンスキーの表情が、どこか神秘的に思えてしまう。 ラル『よっ、色男!』 突然、ラルの言葉が俺の脳裏で思い出され、なぜだかクルピンスキーから目をそらしてしまった。 クルピンスキー「どうかした?」 俺「いや、なんでもない。それより、こんな時間にどうしたんだ?」 とっさに話題を変える。 特にクルピンスキーは疑問にも思わなかったようで、俺は内心ほっと胸をなでおろした。 クルピンスキー「君の寝顔を見に来ただけ……ってのは?」 俺「その言い方はどう聞いても他の理由があるって言ってるようなもんじゃねぇか」 クルピンスキー「あはは、まぁその通りなんだよね。今日の用事はこれさ」 言って、クルピンスキーが俺の目の前に出したのは、一本の酒瓶だ。 クルピンスキー「スコッチだよ、しかもロイヤル・ブラックラのさ」 俺「おうおう、またいい酒が出てきたじゃねえか」 ロイヤル・ブラックラとは、1853年に蒸留所として初めてロイヤル(王室御用達の称号)を冠することが許された蒸留所だ。 俺「って、待て待て。そんないいのを飲めるのは嬉しいけど、こんな時間になんでわざわざ?」 クルピンスキー「え、だって約束したじゃない」 俺「約束?」 クルピンスキー「あれ、忘れちゃった?」 俺「ん~?」 顎に手を当て、いつそんな約束をしたかと頭を悩ます。 だが、すぐに思い出された。 俺「あぁ、今日の出撃前か」 クルピンスキー「ご名答。まぁ、本当はお酒の方は君が用意するって約束だったんだけどね。私、約束をちゃんと守れない男の人は嫌いだなぁ」 俺「はは……」 拗ねたような表情でじっと見つめられ、なんとなく苦笑いでごまかしつつ目線を逸らすことしかできなかった。 振る舞うと約束していた「北の誉」は未だに俺の部屋で眠っている。 俺「すまんすまん。今度ちゃんと埋め合わせするから許してくれ」 クルピンスキー「そう? なら、怪我もしちゃったし、情状酌量の余地ありってことにして今回はおおまけにまけて許してあげるよ」 俺「ありがとさん」 クルピンスキー「ふふっ、何をしてもらおうかなぁ」 俺「おいおい、お手柔らかに頼むぜ?」 クルピンスキー「それは、保証できないかな」 俺「やれやれ……」 なにを考えているのか、楽しそうに笑うクルピンスキーに、俺は肩を竦めてみせるが、表情は笑っている。 クルピンスキー「ま、それはいつかのお楽しみにとっておくよ。それよりもはやく飲もうよ」 俺「そうだな、まずは飲むか」 クルピンスキー「うんうん」 スコッチが開けられると、クルピンスキーの口元に瓶が傾けられ―― 俺「待った!」 そこへ俺の静止が入った。 クルピンスキー「なんだい?」 俺「コップは?」 クルピンスキー「ないよ?」 それがどうしたんだい、とばかりに軽く首をかしげながら言い放つクルピンスキー。 俺「なんで?」 クルピンスキー「別に、回し飲みすればいいじゃない。私たち、仲間なんでしょ?」 俺「うーん、まぁ、そんなもん……なのか?」 クルピンスキー「そんなもんさ」 なんだか半分納得できないが、スコッチ片手ににこにことご機嫌そうなクルピンスキーを見ていると、なんだかそれでいい気になったので、俺は納得することにした。 クルピンスキー「ん……んく……」 瓶に直接口をつけ、クルピンスキーがスコッチを飲む。 上下に動く喉仏の白さがどこか色っぽかった。 クルピンスキー「ぷはっ……ふぅ、やっぱり美味しいね」 服の袖で口元をぬぐうと、瓶を俺へ向かって差し出す。 クルピンスキー「はい。次は君の番だよ」 俺「おぅ」 瓶を受け取り、飲もうとするのだが、瓶の口が目に入り、動きを止めてしまう。 そう、先ほどクルピンスキーが口を付けていた部分だ。 クルピンスキー「どうしたの?」 俺「ん、あ、いや……」 やばい、と思ったのだが、 クルピンスキー「あ、そっか。右手だけじゃ飲みづらいよね。私が支えようか?」 俺「ああ、いやそれは大丈夫だ」 なんとかクルピンスキーはいい具合に勘違いしてくれたので、またまたほっとする俺だった。 俺「つーか、お前に支えられたら、一気飲みさせられかねないだろうが」 クルピンスキー「あ、ばれた?」 俺「やっぱりか」 おどけて見せるクルピンスキーを横目に、もう色々深く考えるのはやめてスコッチを傾ける。 漂う香りは、フルーツやシロップなどのどこかあまそうであり、その中に混じるアルコールがいいアクセントと感じた。 俺「んっ……」 飲み口は結構クリーミーでなめらか。 青リンゴの味わいなどジューシーなフルーツ感が一気に押し寄せるが、スパイシーな刺激が舌を包み込んでいく。 重厚な味わいだ。 俺「はっ……」 流れるスコッチが、喉に熱を感じさせる。 飲み終われば、熟成された深い甘みが鼻を抜ける。 俺「うん……うまい」 クルピンスキー「でしょ?」 にこりとクルピンスキーが笑みを浮かべる。 クルピンスキー「じゃ、次はまた私だね」 俺「ああ、ほらよ」 クルピンスキー「ん、ありがと」 月明かりだけが照明の深夜、二人はスコッチの瓶が空になるまで順番に飲み続けた。 濃く甘い味わいは、スコッチのもともとの味だけではなかったが、それにはどちらも気づくことはない。 もう深夜も遠に過ぎ、明け方と呼ばれる時間帯。 窓から白む東の空の光が差し込んでいる。 クルピンスキー「……」 酒盛りを終えて部屋に帰ったはずなのに、再び医務室にクルピンスキーが現れる。 俺「……」 今回は、いい具合にアルコールが回っているのか、俺は気持ちよさそうに眠ったまま起きることはない。 クルピンスキー「ふふっ」 声を抑えた笑みを零す。 クルピンスキー「ぐっすり寝てるね」 俺の顔の上で手をひらひらと振ってもなにも反応は返ってこない。 深い眠りに俺がついていることを確認すると、置きっぱなしだった椅子に座り、寝顔をじっと見つめる。 クルピンスキー「今日は、いやもう昨日かな? とにかく、色々迷惑かけちゃったよね」 普段の飄々とした彼女からは想像がつかないほど、静かで弱々しい声だ。 クルピンスキー「だけど、本当にありがとう」 浮かべられた笑みは、優しいものだ。 クルピンスキー「でも、君も無茶するよね。私は墜落し慣れてるんだから、放っておけばいいのに」 静謐な医務室に、俺へと語りかける言葉だけが響く。 クルピンスキー「もしかしたら、私が君をかばったから?」 すっとクルピンスキーの右手が俺の頬に伸びる。 クルピンスキー「もし理由がそれだけだとしたら、それはそれでちょっと残念かもしれないな」 最も冷え込む、明け方に人肌の温かさは心地よい。 クルピンスキー「ねぇ、君は私のことをどう思ってる?」 返事はなく、彼女も期待していない。 クルピンスキー「嫌いってことはないと思うけど」 言葉は途切れることなく続く。 クルピンスキー「同僚? 戦友? 酒飲み仲間? それとも……」 そこで、クルピンスキーは口をつぐみ、黙り込んでしまう。 外で、せっかちな小鳥のさえずりが聞こえた。 クルピンスキー「……一緒だよね」 俺の頬に手を添えたまま、立ち上がる。 クルピンスキー「間接キスをやっちゃえば、もう一緒だよね」 もう片方の手も俺の頬にそえられる。 クルピンスキー「起きないよね?」 どこかむずがゆそうに一瞬身をよじる俺だったが、それだけだ。 クルピンスキー「ねえ、そのままで聞いてくれる?」 徐々に、ゆっくりと彼女の顔が下がっていく。 クルピンスキー「本当に正直に言うとさ」 吐息のかかる距離、もうお互いが触れ合うまで数ミリという距離で静止する。 クルピンスキー「私は、好きだよ……俺」 うっすらとした、二つの影が一つになった。 ページ先頭へ
https://w.atwiki.jp/ieyasutes/pages/89.html
あおいう あ う